思わず足を止め、見とれてしまう衣装があります。
理由を言葉にする前に、まず「いいな」と感じてしまう、その瞬間の感覚。
そうした「あこがれ」は、フィクションの世界に描かれる「かっこよさ」とは少し異なり、歴史の中で育まれてきたクラシカルなドレスや、舞台の上で静かに存在感を放つバレエ衣装、人生の節目に寄り添うウエディングドレスなど、現実の世界に息づく装いの中にあります。
今回は、そうした「あこがれ」を出発点に製作してきた過去の作品を振り返りながら、その背景やこだわりもあわせてご紹介します。
🩰 フリルを形にする
マザー・グースの「リトル・ボー・ピープ」や、バレエ作品『くるみ割り人形』『人形の精』などから影響を受けて製作したドレスです。
チワワさんの耳をすっぽりと覆えるほど大きなボンネットは、後ろをゴム仕様にすることで、被せやすさを重視しました。ブリムの反り具合にも細かく調整を加え、全体のシルエットがやわらかく見えるよう仕上げています。
中でも特にこだわったのが、裾のフリルです。重くなりすぎないよう、軽やかな印象を意識して仕立てました。
アーチ状に垂らしたリボンは、『くるみ割り人形』に登場する人形コロンビーヌの衣装から着想を得て取り入れたディテールです。
直線フリルのギャザー分量については、人間用の洋服を作る際も、付け幅に対して1.3倍をひとつの基準としています。そこから、量感や仕上がり寸法、生地の厚みなどを考慮して微調整をしていきます。
このドレスでは、裾下のフリルを付け幅の1.2倍、その上の両フリルを1.3倍の長さに設定しました。
ギャザーの寄せ方には好みもあるかと思いますが、ひとつの目安として、製作の際の参考になれば幸いです。
🧁 カスケードを形にする
優美で女性らしいロココ時代の装いは、今もなお多くの人の視線を引きつけます。
その中でも、文化や政治の分野で大きな影響力を持ち、知性と美しさを兼ね備えた存在として知られるポンパドゥール侯爵夫人に憧れ、このドレスを製作しました。

François Boucher: Portrait of Madame de Pompadour (1756) – Wikimedia Commons [ Public Domain ]
V字型の胸当てにはサテンリボンを丁寧に並べ、大きく開いたデコルテラインの縁には、繊細なタティングレースをあしらっています。
生地には、優しい色合いのリバティプリント「Pampa(パンパ)」を選び、全体を落ち着いた印象にまとめました。
前面に施した装飾は、カーテンのカスケードから着想を得たものです。当時はカーテンの構造や仕立て方を繰り返し調べ、布の流れと量感をドレスとしてどう表現するかを探っていました。
🗝️ バッスルを形にする
ヒップを大きく見せ、ウエストを細く際立たせるシルエットが特徴のバッスルスタイル。日本では鹿鳴館時代の装いとしても知られています。
ある日、夢の中でバッスルドレスをまとったシルバニアさんの姿と、ドレスの平面展開図が同時にぱっと浮かびました。目が覚めてすぐに忘れないよう描き留め、そのイメージをもとに形にしていったのが、このドレスです。
夢のようなきっかけとは裏腹に、バッスルにフリル、リボンと装飾を詰め込んだデザインのため、製作はなかなか過酷でした。
「こんなところ、どうやってミシンで縫うんだ!」「この縫製手順、無理がある!」と、泣きべそをかきながら作業した日々も、今となっては懐かしい思い出です。
🧹 ドロワーズを形にする
究極の幼児フォルムを目指して作った、魔女の衣装です。
トレードマークでもあるとんがり帽子は、何度かスケッチを重ねてイメージを掴んでからパターンを引くことで、少しクセのある形に仕上げました。
背丈の低いモグラさんやビーバーさんに着せると、まるで土の妖精ノームのようでとても可愛らしいです。
ドロワーズは、四分円の外周と長方形の布を組み合わせ、裾にゴムを通して引き締めることで、樽のようなシェイプを作っています。
上着のスモックと合わせたときに、裾がふわっと広がるフォルムになるのが、こだわったポイントです。
💍 ティアラを形にする
結婚式のウェルカムドールをイメージして作った、街のすてきなカップル専用のブライダルコスチュームです。
シルバニアの設定ではまだカップルの二人ですが、近い将来、結ばれたらいいな——そんな少しおせっかいな思いを馳せながら作りました。
花嫁の頭を飾るヘッドドレスは、ウエディングドレスがシンプルなデザインであるからこそ、王道のプリンセスティアラに仕立てたいと考えました。
中央に配したチャトンから、ハの字に広がるウェディングベールが、この装いのポイントです。
📒 その他の作品
ほかにも、R.ジョン・ライトのドールファッションやリアルなファッション誌などから「いいな」と思い、製作した作品があります。そこには、その時々の興味や試行錯誤が、そのまま形として残っています。
これからも表現を少しずつアップデートしながら、「あこがれ」を形にしていければと思います。
























