あるものを活かして、そこから何かを生み出す――そんな時間が、私は好きなのだと思います。
ミニチュア服作りでも、製作後に残る端切れを前に、「ここから何か作れないだろうか」と思いを巡らせる時間を楽しんでいます。
そうして生まれているのが、minneでお迎えくださった方へお贈りしている赤ちゃん服です。
今回は、端切れが小さな赤ちゃん服へと生まれ変わるまでの工程をご紹介します。
まずは、裁断を終えて作品のパーツを切り出したあとの余り部分を整理のために切り落とします。
一見すると捨ててもいいような小さな切れ端も多いのですが、赤ちゃん服のサイズならパーツを一つ、二つと取ることができるので、できるだけ残すようにしています。
赤ちゃん服の型紙を布に当てて、チャコペンシルで形を写し取り、ひとつひとつ丁寧に裁断していきます。
チャコペンは、水を含ませた布で拭き取ることで消せる、水溶性のものを使用しています。色はホワイトが一番使いやすいです。
- チャコペル
形に合わせて切ったパーツの布端に、綿棒でほつれ止めを少量取り、必要な箇所に点付けしていきます。
ピケは一度布に付着すると落ちにくく、シミになることがあるので、裁断からやり直すこともたびたび…注意が必要な作業です。
- ほつれ止めピケ
その後、パーツ全体に軽くキーピングを吹き付け、晒の上からアイロンをかけて糊付けします。
キーピングは、旧パッケージのレトロ感が好きで、詰め替えながらずっと使い続けています。
糊付けすることでパーツにほどよいハリが生まれ、布が扱いやすい状態に整うので、次の工程がぐっと進めやすくなります。
袖口や身頃、ズボンの裾など、お人形の着せ替えの際に布がめくれやすい箇所には、仮止め用の熱接着両面テープを使って布端を軽く固定します。
そのほか、マジックテープの仮止めや、肩紐など小さなパーツの“芯代わり”としても熱接着両面テープを活用しています。
- 熱接着両面テープ
組み立てる前の準備が終わったので、ここからパーツを縫い合わせていきます。
…その前に!
小さなパーツや薄手の布をミシンで縫うとき、縫い始めや縫い終わりの返し縫い、あるいは布端の段差などで、針が布にもぐり込んで動かなくなることはありませんか?
そんなときは、布の下にハトロン紙を敷いておくと、針が布にもぐり込まず、布が安定して縫いやすくなります。
実はこの方法は、人間サイズの洋服で裏布を縫う際に使われるコツを、ミニチュア服作りに応用したものです。
ハトロン紙とは薄手で少し透け感のある紙で、普段は型紙の写しに使っています。
- ハトロン紙
また私が使っているミシンには、針穴の切り替えができる針板(直線用スライド針板)がついています。
薄地の生地で仕立てることが多いミニチュア服を作る際、針板の切り替え機能があることで、布をきれいに安定して縫うことができます。
小さな布や薄地を縫う機会が多い場合は、直線用スライド針板が付いているミシンかどうかも、選ぶときの目安にしてみてくださいね。
縫い始めと縫い終わりの糸は、少し長めに残しておきます。
糸がゆるまないようしっかり結んだら、爪楊枝の先にとったほつれ止めを結び目に塗ります。
普段の作品製作でも、同じような工程で始末をしています。小さいなりに工夫を重ね、できる限りベストを尽くすことも、一つの楽しみです。
仕立て上がったら、最後に赤ちゃんたちに試着させて完成です。今回は端切れの布から、6着の赤ちゃん服を作ることができました。
端切れが小さな赤ちゃん服へと姿を変えていく瞬間は、ほんの少し魔法を使えたような、ささやかな満足感があります。
赤ちゃん服は、minneでご購入くださった方への特典としてプレゼントしています。
その時々でデザインが異なりますので、どんな一着が届くかも楽しみにお待ちいただけましたら幸いです。
🪡 想いは手から生まれる
私が物作りを好きになった原点には、子どもの頃に観た映画『シンデレラ』があります。
ネズミたちがシンデレラのために、ドレスの続きを仕立てていく——あの場面を観て、言葉がなくても「誰かのために何かしてあげたい」という思いは手仕事を通して伝えられるのだと知り、私も“手を使ってできること”をしたいという気持ちを強く抱くようになりました。
そうして物作りに心が向いていく中で、裁縫そのものに強く惹かれるきっかけとなったのが、マドレーヌ・ヴィオネについて書かれた本との出会いでした。

Madeleine Vionnet – photo by Henri Manuel [ Wikimedia Commons, Public Domain ]
ヴィオネの言葉の中に、私が深く感銘を受けたものがあります。
“When a woman smiles, her dress must also smile with her.”
女性が笑うなら、その服も彼女といっしょに笑っていなければならない。
(身体と自然に調和し、動きに寄り添う服こそ美しい——。)
この言葉に触れたとき、私もまた、お人形が微笑んでいるように見える服を作りたいと強く思うようになりました。
言葉では伝えきれない思いも、手で作るものには小さな温度としてそっと宿る。
その原点を忘れず、これからもミニチュア服を作り続けていきたいと思います。







